わんこの置物

帰宅すると、大きな陶製のわんこが玄関に座っていた。
びっくりして、思わず悲鳴をあげてしまった。
母が購入したものだった。
帰宅した父もかなり驚いていたようだった。


そう、うちには、わんこが二匹いた。
ゴンタ(柴犬)はこの夏に、私達とさようならをした。
病院でも褒められるほどの長老で、なぜか死後硬直もおこらず、いつものやわらかい体のまま、呼びかけても二度ともどらないとはこういうことなのだと、とても悲しかった。


そのゴンタと同じ柴犬が玄関に居るのだ。
ゴンタ風だが、何もかも明らかに絶対にゴンタとは違い、ものすごい違和感がある。
しかも生きてない(置物だから当たり前だが)のに、目が開いていて、目が合うのだ。
どうしてこんなにドキっとするのだろう。
冷静に理由を考えて理屈をつけてでも理解して気持ちを落ち着けないと。
母の気持ちもわからなくはないが、まだゴンタの剥製でもあったほうが全然いい。


怖いので自分でも、認めたくないけど勘が働くとしか説明がつかない偶然があるときがある。
おばあちゃんの時も、私を可愛がってくれていた社長のときも、兄弟わんこのときも。
だから、その話をして、友達にあげてもらう事にした。


こういうのは、ホント苦手だ。